乳腺外科
あなたの身体のことを
あなた自身が「わかる」ようお伝えします。
乳腺・乳がん診療に
あたっての方針
- 早期診断のための検査
- マンモグラフィ、超音波診断装置、MRI、CT等の画像診断を用いて、より早期の乳がんの発見と確実な診断を目指しています。
穿刺細胞診、針生検、腫瘤を触知しない病変に対するマンモグラフィ・超音波ガイド下細胞診、針生検、
乳頭異常分泌例に対する乳管造影等を必要に応じて行っています。
- 手術
- 乳房温存手術:乳房を可能な限り温存する方針で臨んでいます。
腫瘤径が大きいため通常では乳房温存療法の適応にならないような症例でも、
術前化学療法により腫瘤の縮小をはかることにより、温存術を選択することが可能になることがあります。
赤外観察カメラシステムと、術中迅速診断を用いたセンチネルリンパ節生検を行っています。
形成外科医と連携し、ティッシュエキスパンダーを用いた二期的同時再建を行っています。
- 術後補助療法
- 術後の抗癌剤・ホルモン療法による補助療法は個々の癌の特性を考慮しながら、
EBMを活用し個人個人に適した治療法を選択しています。
- 再発患者さまに対する治療
- 病気があってもQOLを保ちながら長期に生存できることを目標として治療に臨んでいます。
診療のご案内
診療時間 | 平日 9:00~18:00 土曜 9:00~17:00 |
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お昼休み | 13:00~14:00 |
休診日 | 日曜・祭日 (急患の方は時間外も受け付けます) |
取扱保険 | 社保・国保・労災・生保 |
乳がんトータルケア
乳がんの不安を取り除けるよう女性のために心くばりをした、
トータルケアを行ってまいります。
検 診
現在、集団検診としては40歳を過ぎたら2年に一度、マンモグラフィ検診が推奨されています。
日本人では乳がんの発症率が40歳代から上がるためですが、若い女性でも乳がんが見つかることがあります。
定期的な検診の他に、自己検診も重要です。いつもと違うと思ったらすぐに病院を受診しましょう。
また、集団検診ではマンモグラフィ検診が勧められていますが、超音波検査の方が有用である場合もあります。
乳がんでないと診断されたら
将来、乳がんにならないということではありませんので、自己検診を行うことが大切です。
また、自分ではわからないこともあるので、定期的に検診を受けることも大切です。
良性乳腺疾患
乳房に痛みや腫れた感じなどの症状があるが、診察で乳がんを疑う所見がない場合に「乳腺症」と言われることがよくあります。乳腺症というのは、乳腺にいろいろな組織変化が起こっている状態で、自覚症状のある場合とない場合があります。
正確には、組織を取って顕微鏡で調べないと乳腺症という診断はできないのですが、便利の良い言葉なのでしばしば使用されています。基本的には加齢による変化なので心配のないことが多いのですが、中には、乳がんと紛らわしいしこりができたり、乳頭から分泌液が出たりすることがあります。
乳腺症から乳がんになることはありませんが、細胞の増殖が高度で、細胞の異型性が強い場合には乳がんの発生リスクが高いと考えられています。
乳腺にできる良性腫瘍の代表的なものとして「線維腺腫」があります。20歳代にできることがほとんどですが、30歳以上になって初めて見つかるものもあります。卵のようなしこりが触れ、つるつるとしていて、ころころと良く動くのが特徴です。 以前からあっても大きくなる場合、新たに発見された場合には精査が必要です。
臨床的に線維腺腫と考えられても、調べたら乳がんであったということもあるので、初めて見つかった場合には細胞診をお勧めしています。場合によっては組織診断も必要です。
乳腺に炎症がある場合には「乳腺炎」と診断されますが、これは急性と慢性に分類されます。
急性乳腺炎が多く、授乳期に認められるうっ滞性乳腺炎と細菌感染をともなうものがあります。前者の場合、赤ちゃんに吸ってもらうのが一番です。助産師によるマッサージも有効ですが、過度のマッサージは逆に、乳汁の産生を促進するので症状が増悪することがあります。
また、乳頭の清潔を保つようにしてください。後者の場合、抗生物質や切開排膿が必用な場合があります。
この他にもいろいろな疾患があります。
手 術
一昔は、乳がんと診断されると乳房全部とリンパ節、筋肉を一緒にとる手術(ハルステッド手術)が行われていました。
現在では、乳房を可能な限り温存する手術(乳房温存手術)が主流となっています。
ただし、がんの取り残しの問題や、切除範囲が広いと、せっかく残しても変形が強く十分な満足が得られない場合もあります。このような場合には乳房を切除する手術を行います。この手術では乳房は失われますが筋肉は残るので、胸がえぐれたようになるということはありません。
腫瘤径が大きいため通常では乳房温存療法が難しい場合でも、先に薬で治療することにより、乳房をより温存することが可能になることがあります。これを術前化学療法といいます。
手術の合併症
乳房の手術にともなう合併症としては、出血、感染、皮膚壊死、変形などの他に、創部、上腕のしびれや痛み、
肩の運動制限、上腕浮腫などがあります。創部のしびれ、痛みはしだいに軽減していきますが、完全にはなくならないこともあります。また、普段はどうもなくても、寒いときや天候の悪いときに症状が発現することもあります。
運動制限や術後の早期に認められる上腕浮腫については、リハビリテーションやマッサージにより、次第に改善します。 一方、慢性的に発症した浮腫については根本的な治療はなく、治療は困難なことが多いので、予防が大切です。予防策としては、手術側の腕に負担をかけないようにすることが勧められます。かといって、過度に保護する必要はなく、手術前にしていたことはしてください。一般的には、注射や採血は対側の腕から行う、重い荷物を長時間提げないなどの注意が必要です。 あるいは、ハンドバッグを長時間同じ姿勢で腕に下げていたら腫れたということもありますので、軽いものでも、時々は持ち方を変える、腕を動かすなどしてください。
腫れた場合にはマッサージ、弾力包帯、スリーブ着用の他、負荷をかけない、就寝時に枕などをいれて心臓より高く保つなどの対策が重要です。また、手や腕に怪我をしたり虫に刺されたあとにひどい炎症を起こすことがあるので注意が必要です。 草むしりをするときなどは手袋をするようにしましょう。急に赤く腫れてきて熱がある場合には抗生物質が必要になる場合もありますので、できるだけ早く受診してください。
手術の後に腋窩などに液体が貯留することがあります。この液は、滲出してくる液とリンパ液が混在したもので、術後、数日はドレーンという管を入れて溜まらないようにします(乳房温存手術ではドレーンを入れないこともあります)。このドレーンは量が少なくなると抜きますが、その後で、この液体が溜まって腫れてくることがあります。これを漿液腫(セローマ)と呼んでいますが、たくさん溜まった場合には針を刺して抜くこともあります。感染が起こらなければ数日から数週間で改善するので心配はいりません。
術後のリハビリテーション
ハルステッド手術のような筋肉も切除する手術では早期リハビリテーションの重要性が強調され、直後から積極的なリハビリテーション(特に、肩の運動)を行うことが勧められていました。しかし、創部に液体が溜まったり、傷の治癒が悪くなるなどの問題も指摘されていました。
また、長期的に見るとゆっくりはじめた場合と大きな差がないこと、最近の手術は筋肉を切除しないことなどから、最近では、肩の運動はゆっくりあせらずに、少しずつ進めても大丈夫であると考えられています。しかし、前腕、手の運動は直後から開始し、術後の腕の腫れもマッサージにより早期に改善しますので、積極的に行うことが大切です。
一方、最近ではエコノミー症候群といわれる血栓症の問題がクローズアップされています。
当院では、できるだけ早く歩行を開始するように勧めています。
術後放射線療法
乳房温存手術後には温存した乳房内の再発を防ぐために放射線治療が行われます。乳房切除術を行った場合もリンパ節転移がたくさんあると局所やリンパ節再発を予防するために行うこともあります。一般に、創が治ってから照射を開始しますが、術後に化学療法を行う場合には化学療法が終了してからになります。
放射線療法の照射を行った場合、皮膚が赤くなったり、痒くなったりすることがありますが、ほとんどの場合、照射が終了すると改善します。痛みを伴うこともありますが、多くの場合、軽度で、長期間、持続することはありません。胸壁への照射にともない、肺、心臓などに影響の及ぶ可能性があるため、稀に、肺に炎症反応を起こすことがあり、この場合、息切れをともなうこともあります。また、稀に、肋骨骨折を起こすことがあります。このため、照射にあたっては肺や心臓への影響の最も少ない方法が選択されます。極めて稀ですが、放射線による二次がんが発生することが知られています。
また、将来、乳房再建を希望される場合、創の治りが悪くかったり、皮膚の進展が悪くなるためにきれいにできなかったりすることがあります。
術後のフォローアップ
手術後の再発、転移は誰にとっても心配なものです。乳がんの再発、転移は局所と遠隔にわけられます。局所は手術を行った側の胸部と鎖骨下リンパ節(首の付け根にあります)、遠隔転移は骨、肺、肝臓、脳、縦隔リンパ節(胸の奥にあります)などに起こります。手術した側とは反対の乳房(対側乳房)に乳がんができることもあります。これには、転移したものと、別のがんができたものがありますが、臨床的にこれらの区別が難しい場合もあります。
通常、手術、放射線療法、薬物療法などの初期治療が終了した場合、最初の2 - 3年は2 - 3ヶ月毎、その後、6ヶ月毎から1年に1回の定期的なフォローアップを行います。定期検査として推奨されているのは、マンモグラフィ検査です。この他、骨に対しては骨シンチグラム、CT、MRI、レントゲンなど、肺に対してはレントゲン、CT、肝臓に対してはCT、MRI、エコーなど、脳に対してはCT、MRIなどの検査があります。
また、腫瘍マーカーや、PETもあります。これらの検査は、何か疑う所見や自覚症状があれば行う必要がありますが、いずれの検査も万能ではなく、定期検査としての有用性は認められていません。術後のフォローアップはそれぞれの検査の利点、欠点、あるいは限界を考慮しながら、リスクや状況に応じて個別に対応することが必要です。
再発乳がんに対する治療
症状がある場合、その緩和にも努めます。当院には緩和ケア病棟もありますので、トータルケアを目指すことが可能です。